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「Another Roman」とは一体?
2008.01.28 |Category …Roman
そもそも「Roman」とはイヴェールの物語。
イヴェールとは「生と死の狭間」にいる人。生まれてもいないし死んでもいないからこそ自分が生まれてくることの出来る物語≒誰かの人生を探させている人。
対して「もう一つの物語」
ジャケットからしてこちらは「壊れた人形 骸の男 時を騙る幻想の物語」
「死」に傾き、何らかを偽っている物語。
私はこれが「ミシェルの描いた物語」だと思っていたのですが、そうそう単純な者ではないのではないかという気がしてきました。
根拠は「ミシェルがイヴェールの誕生を待っていること」
「生まれておいでなさいといっている彼女の幻想が果たして本当にイヴェールが「骸の男」として描かれている物語なのか。
もう一つ。
ジャケットでヴィオレットの側に描かれている物語。これらは「another」の方が雰囲気が良いことが挙げられます。少年は少女を振り返り、星屑の少女はプルーと向き合い、金髪のローランは刺されていない。
誰も死んではいないのではないか、という仮説が成り立ちうると思いました。
発想が突飛なのは百も承知ですが……
「骸の男」となったイヴェールがこれから生まれてくる物語=「another roman」なのではないでしょうか。死んでいるから生まれてくることが出来る。これはひどく正常な状態であるといえます。これこそが「彷徨った末に見つけた焔(=命)の物語」なのだとすれば、通常の「roman」世界こそミシェルの作り上げた幻想なのではないでしょうか。
すなわち生と死をつりあわせることで、イヴェールを「生と死の狭間」にとどめた末に、ミシェルの都合に合わせて生まれてこさせる。
結果、通常の「roman」では真実の母からの伝言は届かない。
……ちょっと無理があるでしょうか。
熟考してみます。
彼は何処にいるのだろうか?
2007.12.12 |Category …Roman
今回は「冬の人」ことイヴェールについて。
「つながる物語」を語る「Roman」にあって唯一「朝」にも「夜」にも所属しないひどく特殊なお人です。
では此処で最も単純な疑問。
「彼は何処にいるのだろうか?」
生にも死にも所属しない、と概念で言えば一口に済んでしまいますがこれはひどく気持ちの悪いことですよね。
「生まれて来る前に死んでゆく僕」
そんなことは出来るはずがありません。生まれなければ死んでいくことは出来ないのですから。
これを単純に「流産」と考えることも出来ますし、私自身もそう考えています。
しかしもしも「流産された子=イヴェール」ならば彼は死に属する人間であるはずです。堕胎・流産であってもそれはすなわち赤ん坊の「死」を意味するのですから「生と死の狭間」にとどまる意味がありません。
では何故彼は今なお生まれることも死ぬことも出来ないのか。
可能性としては二種類でしょう。
・イヴェール自身に何らかの不確定要素(魔力的な何か)がある
・ミシェルによる干渉がある
前者についてはイヴェールがそもそも特殊な事情のもとにおり、双子の人形に世界を廻らせている以上、何らかの力を持っていても不思議ではありません。
但しイヴェール本人が「生まれてくるに至る物語」を探させている以上、少なくとも恣意的な「力」ではないと思われます。
後者。ミシェルはイヴェールに対し「生まれておいでなさい」と語っている。彼女は何らかの事情で「彼が生まれてくる」ことを望んでいることから一見彼を「生と死の狭間」に置くことは好ましくないようにも思えます。
しかしながら、もしもイヴェールを「生と死の狭間」にとどめることによって彼女が望む時代・望む場所に彼が生まれるように彼を誘導しているとしたらこの説もあり得ないことではありません。
個人的には後者だと思っています。
根拠として、わざわざかの「殺戮の舞台女優」が此処まで出張ってきたその理由がイヴェールにある以上、彼の運命に深く関わっているのは彼女でしかあり得ないでしょう。
さて、イヴェールは誰のもとに生まれることになるのでしょうか。