エルとアビスの位置関係。
2007.11.04 |Category …Elysion~楽園幻想物語組曲~
「Elysion」に出てくる「楽園」とは
・「ELYSION」
・「Eden」
対して「奈落」とは
・「Abyss」
それぞれの場所と性質を表にすると以下のようになります。
場所 | 性質 | |
ELYSION | ギリシア神話より ・天上 ・地下 の二説あり |
英雄たちが死後訪れる楽園 |
Eden | 聖書「創世記」より 「東の方」 |
地上の楽園。理想郷。 |
Abyss | ギリシア神話より 地下 |
ー |
以上のようにELYSIONとEdenはイコール関係にはありません。楽園である、という点では同義ですが、Edenは死後に訪れる世界ではないからです。事実、アダムとイブはここから追放されましたが彼らに生命のレベルで何らかの変化があったわけではありません。
一方、Abyssとは「場所」を指す言葉であって、決して地獄などを指すものではありません。
此処でElysionとAbyssを比較するに、両者は確かに場所的には同一のものであると言えます。
ところが「楽園パレード」で彼らは「沈む夕日に背を向けて」パレードを行っています。つまり夕日=西なのですから必然的に彼らが向かっているのは東。
ですが東にあるのは「Eden」=地上の楽園であってElysionではありません。
仮面の男ABYSSはそれを知らないのでしょう。決してELYSIONに向かって進んでいるのではないのだということを。
「エル」とは何か。
2007.09.25 |Category …Elysion~楽園幻想物語組曲~
「エル」とは何か。
勿論作中の「エリス」の愛称である、ということではなく、この地平線を通して語られる「エル」とは一体なんなのか、という話です。
歌詞によれば「理想」であり「鍵穴」であり「楽園」であり「少女」(「エルの天秤」より)
これが全てイコールで結ばれるのであるのかは脇へ置くとしても、単純に愛称とだけ捕らえてはいけないものであることは間違いないと思います。
此処で「EL」について所謂「天使」の名前を引き合いに出します。
作中にもでてくる「ガブリエル」や「ミカエル」など、主要な天使の名前には「エル」が付いています。彼らの名前に付されている「エル」とは『輝ける者』を意味しており、彼らが神の使徒であることを明確にしています。
堕天した「ルシフェル」が「エル」を奪われ「ルシファー」となったことが大変示唆的ではないでしょうか(最も、堕天使たちが皆「エル」を名前から取っているかといえばそうでもないのですが。)
一方、今度はオルフェウス神話の元となっているギリシア神話に目を向けます。
こちらで「エル」に相当するものは心当たりがありませんが、一方で「エリス」は存在しています。彼女は不和と争いの女神であり、トロイア戦争の原因にもなった女神です。ちなみに彼女の娘は争いと混沌の女神です(・・・。)
但し彼女の綴りは「Eris」なので、「Elysion」の綴りを考えると同一性があるとは断言しきれないのですが・・・ただ、人物名は基本的に現地語のままつづる陛下の作詞技法からいって、わざわざカタカナで「エリス」と書いたからには綴りに拘泥する必要はないのかもしれません。
不和と争いの女神の愛称が「輝けるもの」
それだけでこの地平線に通じるものを感じます。
思うに「肖像」の中にあった歌詞
「少女もまた母になり娘を生むのなら 楽園を失った原罪を永遠に繰り返す」
と先述の天使の名前にある「EL」を照合させます。
天使が堕ちることで「EL」を失い堕天使になることと「原罪」を重ね合わせて・・・少し論理が飛躍しますが少女は「EL」を失うことで不和と争いの女神と化すのではないでしょうか。
換言すれば、少女が母になることによって「EL」を失い「原罪」を重ねる。
さて、もう一つ神話を引きましょうか。
「Adam」と「Eve」です。「Eve」は「Adam」の妻であり、彼の肋骨から作り出された存在。ある種「娘」といってもいいかもしれません。
彼女が知恵の実を食べてしまったばかりに楽園<Eden>を追われてしまった、それが「原罪」です。
この歌詞でいわれている「原罪」が「少女が母になって娘を生む」ことであり、それによって楽園を追われるのなら「EL」とは、少女が失ったものは何か。
長々書いてきて結論は一番最初にありました。
文字通り「少女」なのだと思います。
処女性・少女性。
これが「Abyss」が求め続けた「EL」の正体ではないでしょうか。
何故「ABYSS」は「ABYSS」なのか。
2007.09.23 |Category …Elysion~楽園幻想物語組曲~
天国、少なくともあの世のイメージでほぼ間違いないかと思われます。
対して「ABYSS」とは
これは決して地獄でも死後の世界でもなく、ただ場所を示します。言うまでもなく「奈落」
もし地獄やそれに類するあの世を指すのなら「ハデス」とか「タルタロス」になるはずです。「ABYSS」にはあの世の意味はない。
では何故このタイトルを採用したのでしょうか。
此処で「魔女とラフレンツェ」に採用されていたオルフェウス神話を思い起こします。
オルフェウスは死後の世界に妻を迎えに行った。けれど彼は振り返ってはならないという禁忌を破り、地上にたどり着く寸前に振り返り、結局エウリュデュケは再び死後の世界へ・・・。オルフェウスは一人地上の世界に一度は戻ってきます(この後彼は投身自殺したとも彼を愛した妖精(ニンフ)たちになぶり殺しにされたとも言われていますので一度は少なくとも生者の世界に戻っているはず。)
妻は死後へ。
夫は生者のまま。
なんだか示唆的な気がしないでしょうか・・・?
これが「ELYSION」またの名を「ABYSS」その真実の名を解き明かす鍵になるやに思います。
3-1+1-2=1
2007.09.20 |Category …Elysion~楽園幻想物語組曲~
この考察をするにあたり、「逆算」することを思いつきました。
すなわち「最後に二人が消えた」時に一人残ることから、二人が引かれる何らかの事情が生じたときに其処に三人の人間が居なければならないことになります。三人を算定するについて、最後に引かれる二人とは誰か。
此処で「仮面の男」を加えるか否かによってパターンが幾つか考えられます。
A)仮面の男を加えない
A-1)「一人娘」が殺した(取り敢えず「首」に関しては考えずに)二人
A-2)「一人娘」ともう一人(無理心中的に)
A-3)「一人娘」ともう一人(「一人娘」は仮面の男に連れ去られ、もう一人は「一人娘」に殺されたと仮定)
A-4)「一人娘」と男の間に出来た子供と男
A-5)女と女の子供
A-6)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と男(残るのは「一人娘」の実子)
A-7)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と「一人娘」の実子(残るのは男)
A-8)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と女(残るのは女の実子)
A-9)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と女の実子(残るのは女)
A-10)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と女(残るのは「一人娘」の実子)
A-11)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と「一人娘」の実子(残るのは女)
B)仮面の男を加える
仮面の男と一人娘で二人
以上12説の中で真っ先に切れるのがA-1。
荒野に残った一人と「一人娘」を合わせると3-1+1=4になってしまうからです。
残った三つの説で考察を続けます。
「+1」について。
此処でB説は「仮面の男」を最後に入れている以上、中途の+1に仮面の男を含まないのは不自然です。逆にA説で「仮面の男」を含むのは不自然になります。
そこで
A説
3-1+1-2=1
B説
3(二人の女と一人の男)-1+1(仮面の男)-2(仮面の男と一人娘)=1
A説が進まないので一度置き、B説を追求することにします。
つまり仮面の男が荒野に出現した時点でその場に居た二人の女と一人の男は「二人」という模範的な数字に集約されていることになります。
「一人娘」が仮面の男に連れて行かれる以上、パターンは僅かに二つ。
B-1)
最初に引かれたのは男であり、女と「一人娘」が二人で暮らしている
B-2)
最初に引かれたのは女であり、男と「一人娘」が二人で暮らしている
B-2に関してはこの時点で殺す必然性がまるで見あたらなくなります
B-1に関しては確かに後から後悔して、というパターンもありそうではありますが、”それでも私は幸せになりたいのです”
この台詞との整合性がとれなくなります。
つまり、「幸せになりたいから恋する相手を殺す」或いは「相手はもう死んでいるのに『幸せになりたい』と女を殺す」
いずれもおかしな話です。
此処でB説を切りました。
ではA説ではどうか。
確定情報を当てはめるのなら
3(二人の女と一人の男)-1+1-2=1
更に現存している五つの説を大別すると最初の「3」と次に出てくる「3」は性質を異にするのか否か、ですね。言い換えるのならば、「+1」という言葉で二人の女のいずれかが子供をなしたかどうかが問題になります。
ではいずれも妊娠していないと仮定しましょう。
そうすると
「-1+1」では性質上なんの変化も起こっていないことになります。
何かが出て行ってまた戻ってくる。
そして結局その状況に絶望した一人娘が収穫にかかる・・・しかしこの説は此処で破綻します。「仮面の男」が「-2」に含まれない以上、「一人娘」は最初の男と女双方を殺す必要がある。しかし、これを採れば今度は荒野に誰も残らない・・・。
残ったのは
A-6)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と男(残るのは「一人娘」の実子)
A-7)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と「一人娘」の実子(残るのは男)
A-8)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と女(残るのは女の実子)
A-9)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と女の実子(残るのは女)
A-10)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と女(残るのは「一人娘」の実子)
A-11)「一人娘」(連れ去られるという意味で)と「一人娘」の実子(残るのは女)
のいずれかです。
換言すれば
A-6)
3(二人の女と一人の男)-1(女)+1(「一人娘」の子供)-2(「一人娘」と男)=1(子供)
A-7)
3(二人の女と一人の男)-1(女)+1(「一人娘」の子供)-2(「一人娘」と子供)=1(男)
A-8)
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(女の子供)-2(「一人娘」と女)=1(女の子供)
A-9)
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(女の子供)-2(「一人娘」と女の子供)=1(女)
A-10)
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(「一人娘」の子供)-2(「一人娘」と女)=1(「一人娘」の子供)
A-11)
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(「一人娘」の子供)-2(「一人娘」と「一人娘」の子供)=1(女)
さて、ぱっと見て「間引く必要がない」ものはどのパターンでしょうか。
6,7,11は必然性がないように思われます。整合性がない、と言いましょうか。
此処で「笛吹男とパレード」より、「一人娘」は”収穫を誤った”と評されています。そしてAbyssサイドの彼女の服には収穫された林檎がない。
→彼女は収穫することが出来なかったのではないでしょうか。すなわち「恋心の果実を為すことは出来なかった」
最後に残った数式は
A-8)
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(女の子供)-2(「一人娘」と女)=1(女の子供)
A-9)
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(女の子供)-2(「一人娘」と女の子供)=1(女)
ここで最後の歌詞に行き着きます。
”もぎ採れないのなら 刈り取れば”
ここでの目的語は間違いなく「果実」ですよね?
すなわち刈り取られたのは恋心から生まれる果実である子供。
3(二人の女と一人の男)-1(男)+1(女の子供)-2(「一人娘」と女の子供)=1(女)
これを暫定回答としておきます。
尚、一人娘が「連れて行かれた」ことに拘っているのは別の曲とも関係のあることなので此処では触れずに終わりたいと思います。